タケカワユキヒデさん(ミュージシャン/73歳)
「銀河鉄道999」「モンキー・マジック」「ビューティフル・ネーム」「ガンダーラ」といった名曲で知られる「ゴダイゴ」。グループは来年に50周年を迎えるが、メインボーカル・タケカワユキヒデさんは1年先行してソロデビューしており、今年2025年に音楽活動50周年を迎えた。
「1975年にアルバム『走り去るロマン』でデビューしました。作曲、編曲、楽器の演奏、そして、英語による歌唱といった色んなことを自分で行ったアルバムでした。当時、ここまで色んなことを1人でやるアーティストはあまりおらず、とにかく、『誰もやったことがないことをやりたい!』という思いが、まず、1番にありましたね。当時、日本では歌謡曲系の音楽は広く普及していましたが、それらが自分には、どうにもしっくり来ない。『洋楽そのものをやりたい』『外国に持っていっても通用するものを作りたい』という思いを持って音楽活動を行っていました」
試行錯誤を重ねたアルバムの制作には、1年後に結成された「ゴダイゴ」のリーダーとなるミッキー吉野が途中から加わり、無事、リリースにこぎつけた。当時、タケカワさんにとってレコーディング作業は困難を極めるものだったが、その後、機材の進歩によって便利になっていったという。
「デビュー当初からシンセサイザーはありましたが、画期的だったのは80年代の初頭に登場したドラムマシーンですね。それまで人力でたたいて出すしかなかったドラムの音が機械で再現できるようになりました。それから、1981年に電子楽器の演奏データの共通規格であるMIDI(Musical Instrument Digital Interface)が策定されたことも大きいです。これらが出てきたことでほぼ全ての楽器の音でコンピューターによる演奏が可能になったんです」
「勝ち続ける奴が偉いんだ!」と言わんばかりの時代になってしまった
正に、日本の音楽制作の進化に歩調を合わせつつ楽曲づくりを進めていったタケカワさん。その集大成とも言える、自身のソロデビュー50周年を記念するアルバム「GLORY!」が今年6月7日に発売された。新曲ばかり20曲の日本語版と英語版の計40曲で構成される4枚組のアルバムで、作詞は日本語版をタケカワさん本人が担当。英語版は「走り去るロマン」の時からタケカワさんに歌詞を提供している奈良橋陽子さんと、タケカワさんの四女・武川アイさんだ。日本語版と英語版の1曲目はアルバムのタイトルにもなっている「GLORY!」(日本語版では「グローリー!」)だ。日本語版の歌詞には「勝ち続けることに意味なんかないぜ」「勝ち続けるだけじゃいつか倒れるぜ」といった、「継続的な勝利」に関するフレーズが目立つが、その意図についてタケカワさんは語る。
「僕らが子供の頃はそんなことはなかったのに、最近は何だか、『勝ち続ける奴が偉いんだ!』と言わんばかりの時代になったように感じます。それこそ、『勝ち組』なんて言葉を初めて聞いた時には、『バカじゃねえの?』と思ったものです。だから、『glory』(栄光)は、そんなこととは関係ないところにあるんだよということを表現しようと思いながら歌詞を書きました」
■2年ぐらいしたら新たに40曲ぐらい作れているかも
アルバムには他にも、47年前の1978年に誕生するも、これまで日の目を見てこなかった「ベルサイユの花」という楽曲も収録されており、こちらもお勧めだという。直近の目標は「GLORY!」の楽曲を、できるだけたくさんの人々に聞いてもらうことだというが、「2年ぐらいしたら、新たに40曲ぐらい作れているかも」とも笑顔を見せたタケカワさんは、最後にこう語った。
「日刊ゲンダイ50周年おめでとうございます! 是非、100周年に向かって進んでいただければ。私自身がデビュー100周年の122歳を迎えられるかは正直分かりませんが、私もそれを目標に頑張っていきたいと思います。どちらも朽ち果てることなく、精進していきましょう!」
▽タケカワユキヒデ 1952年、埼玉県生まれ。東京外語大在学中の75年にソロデビュー。デビュー50周年記念アルバム「GLORY!」(ディスク1&2=英語バージョン、ディスク3&4=日本語バージョン。税込み1万円)が発売中。