2400万が160万に溶けた…地獄を見た怪談師が3.3億円築いた「0円トレード」の極意

怪談師として活動しながら、’23年に個別株で「億り人」となったハニートラップ梅木さん(42)。「最初は失敗だらけでした」と振り返る

トランプ大統領の再選と関税政策、高市新総理の誕生に日銀の利上げ、そして連日のように更新される日経平均の最高値など、’25年は株式市場が大きく動いた1年だった。 

その一方で、実生活の手取りは思うように増えず、副業や資産運用に力を入れ始めた人も多いだろう。つみたてNISAだけでいいのか。個別株にも興味はあるけど「怖い」「難しそう」と二の足を踏んでいる人も多いのでは? 

そこで、この状況を乗り越えるべく、わずか5年で総資産3.3億円を築いた怪談師・ハニートラップ梅木さん(42)に話を聞いた。35万円でスタートし、1年で2400万円まで増やしたものの、翌年には160万円に大幅に減らした時、彼はこう思ったという。 

「なぜ株価が動くのか分からない。それが一番怖かった」 

個別株を「怖い」と感じる本当の理由は、リスクが高いからではなく「分からない」から。梅木さんが地獄から這い上がり、3.3億円を築くまでに身につけた「分からない」を減らす方法とは? 

「幽霊よりよっぽど怖い…」資産2400万円が160万円に溶けた“地獄”の教訓

――トランプ関税に新総理の着任など、’25年も株式市場が大きく動きました。梅木さんの今年の成績はいかがでしたか? 

梅木:今年の利益は2億円くらいで、総資産は3.3億円くらいです。普段はデイトレ(その日のうちに売買を終える短期取引)が中心ですが、資金が増えてデイトレだけでは使い切れなくなったんで、今年はスイング(数日から数週間保有する取引)や中長期(数ヵ月以上保有する取引)も始めました。米国株や金・銀など、投資対象も少しずつ広げています。

――順調に資産を増やしてこられたんですね。

梅木:いえ、全然順調じゃなくて、最初は本当にダメダメでしたね(笑)。証券口座を開いたばかりの頃は、誰かが「これいいよ」と言っているのを鵜呑みにしてスイングで買ったりしていたんですが、全然上がらなくて何度も失敗しました。なぜ上がらないのか分からない。なぜ下がるのかも分からない。この「分からない」が一番怖かったです。 

自分なりに勉強もしていたんですが、知識が浅かったので、やることなすこと裏目に出て、「投資って難しいな~」と痛感しました。

――そこから、どうやって今の成績まで?

梅木:本気で取り組み始めたのは’19年末ごろで、その頃からデイトレに切り替えました。ちょうどコロナショックから回復するタイミングだったので、35万円くらいの元手が2400万円くらいまで増えたんです。 

もう、毎日がお祭り状態でした。朝起きて株価を見ると、どんどん上がっていく。「自分は株の才能があるんじゃないか」って本気で思いましたね(笑)。

――2400万円まで増やした後は、さらに順調に?

梅木:いえ、そこからは地獄でした。’21年に入って、コロナバブルが終わると、潮目が完全に変わったんです。それまで通用していた手法が、まったく通じなくなりました。買えば下がる、売れば上がる。何をやってもうまくいかない。2400万円あった資産が、気づけば160万円になっていました。精神的にもかなり追い込まれましたね。 

何が間違っているのかも分からない。なぜ負けるのかも分からない。「分からない」まま負け続けるのが、本当に怖かったんです。幽霊なんかより、よっぽど怖かったですよ。

――そこから、どうやって立ち直ったんですか?

梅木:もう一度勉強し直しました。信用買いや不動株(市場に流通していて売買しやすい株)なんかの動きも気にするようになって、’23年末に1億円を突破して、今年は3.3億円まで来た、という感じです。結局、「分からない」を減らすことが、怖さをなくす第一歩だったんです。 

「1億円にする」を目標に、毎日のトレード結果を公開。’20年2月時点で208万円まで資産を増やしていた

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――「分からない」を減らすには、どうすればいいんですか? 

梅木:シミュレーションをやることです。いきなりお金を使って実践すると、勝った時も負けた時も、なぜそうなったのか理解できないまま次のトレードに進んでしまいます。運良く勝っても、次も勝てる保証はありません。負けた時も、何が間違っていたのか分からないから、同じ失敗を繰り返してしまうんです。 

でも、シミュレーションなら、お金を使わずに「なぜそうなったのか」を冷静に分析できます。僕も最初の頃は、実際の値動きを見て「自分ならここで買ってた」というのをメモして、その後どうなったかを確認するというのを繰り返してました。

これを20〜30回繰り返すと、勝ちパターンと負けパターンが少しずつ分かってくるんです。そうすると、自然と「分からない」が減って怖くなくなります。

――シミュレーションって、具体的にどうやるんですか?

梅木:例えば、デイトレの場合なら、前日の夜にニュースやストップ高になった銘柄をチェックして、注目度が高そうなものを2〜3個選んで記録していきます。「自分ならこの価格で買ってた」とメモしておいて、その後の値動きを追う。上がったか下がったか、何円動いたかを記録していくと、だんだん自分なりの勝ちパターンが見えてきます。 

長期の場合は、1回の結果が出るまで時間がかかるので、自分で決めたルール、例えば「売上が伸びている会社」とか「配当利回りが高い会社」といった条件に当てはまる銘柄を何個か同時にシミュレーションすると効率的です。こうすることで、どういう銘柄なら勝てるのか、負けるパターンは何なのかが見えてきます。

「シミュレーションで『分からない』を減らすことが、怖さをなくす第一歩」だと語る梅木さん

――シミュレーションだけで本当に上達できますか?

梅木:できます。シミュレーションをしっかりやれば、無料で実践と同じくらいの経験が積めるんです。シミュレーションを繰り返すうちに、自分の勝ちパターンや勝率が見えてくるから、確信を持って実践に移れるようになるんです。 

それにシミュレーションだと、想定外の動きがあった時も、お金を失わずに冷静に原因を調べられます。日経平均の影響なのか、同業他社の決算なのか、需給の変化なのか。こうやって想定外の理由を1つずつ理解していくことで、実践でも焦らず対応できるようになります。 

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サラリーマンでも可能!「朝9時からの30分」で勝負が決まる衝撃の理由 

――デイトレが効率がいいと聞きますが、日中は仕事があります。やっぱりスイングから始めたほうがいいですか?

梅木:いえ、実はデイトレは朝9時からの最初の30分だけでも十分できるんです。ただ、寄り付き前の8時半ごろから気配を見ておくのが理想的です。この時間は出来高が多く、値動きも活発なので「日中は仕事があるから無理」と諦めてる会社員の方でも、朝のこの時間さえ確保できればデイトレはできますよ。 

それに、デイトレとスイングを完全に分けて考えなくて大丈夫です。僕も結局、両方の要素を使ってトレードしてますから。例えば、スイングのつもりで買ったけど、その日のうちにいい材料が出て株価が目標近くまで上がったら売ればいい。結果的にデイトレになったっていうのも全然ありです。

――なるほど。では、デイトレやスイング、長期投資、それぞれの特徴を教えてください。

梅木:デイトレは、その瞬間の需給(買いたい人と売りたい人のバランス)を見て瞬時に判断するので、難しい財務分析はあまり必要ないんですよ。スイングは数日から数ヵ月保有するスタイルで、1日に2〜3回チェックできれば大丈夫です。デイトレのような瞬発力はいりませんが、板(売買注文の一覧表)を見て需給を判断する力と、決算書やニュースを見て銘柄の価値をある程度把握する力が必要です。

長期投資は決算書を読み込んだり、ニュースを調べたり、含み損(株価が下がって評価額がマイナスになった状態)が出ても冷静に待てる人が向いてます。僕は決算を読み込むのが苦手なんで、デイトレ寄りなんですよ。コロナショックの時も、デイトレだったからその日のうちに売って逃げられましたから。 

どのスタイルから始めてもいいですが、いきなりデイトレを始めると、動きが早くて何が何だか分からないという人も多いです。最初は1日1回見るところから始めて、慣れたら判断回数を増やしていく。そうすると、自然にデイトレ的な思考も身についていきます。焦らず、段階的に進めていけば大丈夫です。 

「現物取引では、同じ銘柄を同じ日に2回以上売買できないんです(差金決済規制)。でも、信用取引を使えば、この制限がなくなるんです」

「借金ではなく“武器”になる」資金40万円からの信用取引がデイトレに必須なワケ

――シミュレーションである程度自信がついたら、いよいよ実践ですね。少額でも始められますか? 

梅木:始めることはできますが、資金が少ないと買える銘柄がかなり絞られちゃうんですよ。注目度が高くてチャンスがある銘柄は株価が高めなことが多いので、そういう銘柄を選べない。選択肢が狭い状態でトレードするのは不利なんです。 

特にデイトレをやるなら、最低でも40〜50万円は用意してほしいですね。理由は、デイトレで効率よく稼ぐには信用取引が必要だからです。 

だから理想は、資金を貯めながらシミュレーションで勉強して、資金が40〜50万円くらいになってから始めるほうがいいと思います。

――信用取引には、追証(追加保証金の略。損失が出た時の追加の支払い)や借金になるイメージがあって怖いんですが……。

梅木:「信用取引=怖い」ってイメージを持ってる人は多いですよね。でも、信用取引が怖いと感じるのも、やっぱり「分からない」からなんですよ。 

信用取引というのは、自分のお金(証拠金)を担保に、証券会社からお金や株を借りて取引する仕組みで、入金している資金の約3倍まで取引できます。

これを使うと、同じ銘柄を1日に何度も売買できますし、株価が下がると予想した時に売りから入る(空売り:株を借りて先に売り、後で買い戻す方法)こともできるので、デイトレにおける強力な武器になります。 

追証が怖いというのも分かりますが、それなら現物取引(自分の資金内で株を売買すること)だけにすればいいんです。 

信用取引を使う場合は、30万円以上の余力が必要なので、余裕をもって40〜50万円くらい用意しておくと安心です。

大事なのは、仕組みを理解してから使うこと。「分からない」まま信用取引を使うのは絶対にダメです。でも、仕組みが分かれば、借金ではなく、あなたの武器になります。 

「負けた理由が分からないまま進むな」3億円投資家が実践する“メンタル管理術”

――実践を始めたら、やっぱり負けることもありますよね。そんな時、どうやって気持ちを立て直していますか?

梅木:僕は、答えを出さないと気持ちを切り替えられないタイプなので、仮説でもいいから何かしらの答えを出します。答えが出ないまま次に進むと同じ失敗を繰り返してしまうので、答えが見つかるまでは触りません。 

だから、負けた時は「なぜ負けたのか」を考えて、次の対策を立てるのが僕なりのメンタル管理法です。人によってメンタル管理の仕方は違うと思いますが、大事なのは「分からない」まま次に進まないことだと思います。

――シミュレーションで勝ちパターンをつかむ、余裕を持った資金を用意する、自分なりのメンタル管理法を見つける。この3つが揃えば、個別株投資は怖くなくなるんですね!

梅木:株を始めるというのは、株を買うことではありません。その前にやるべきことはたくさんあります。僕も35万円から始めて、失敗を重ねながらここまで来ました。焦らず、正しい順番で進めてください。