里見浩太朗さんの「もっとできることがあるんじゃ?と常に考えていました」に演技に対する貪欲さを垣間見た

里見浩太朗さん

里見浩太朗(C)日刊ゲンダイ

「銀幕の大スター」として時代劇から恋愛ものまで活躍されていた里見浩太朗さんは楽屋もスタジオも全体を包み込むような大きなスケールの方でした。それでいて腰も低い、こちらの方が恐縮してしまうぐらい、上品な雰囲気を醸し出し「何でも聞いてくださいよ。言えることは言いますから」と、テレビで見慣れたこぼれるような笑顔と優しいまなざしでスタッフをリラックスさせてくださいました。

新人時代は映画全盛期。「そりゃあ、何もかも失敗と勉強の繰り返しですよ」と言われるまま演技に邁進。次第に自分にできることはないかと、貪欲に探したそう。監督の指示通りに自在に演技を変えていく先輩方を見ながらも、「これでいいんだなんていう気持ちはなかったですね。もっとできることがあるんじゃないか? と常に考えていました」と“正解のその先”を考えていたそうです。今の指示待ちの若者とは異なります。

「先輩方が失敗を恐れずに挑戦を繰り返し、改善・改良して頑張ってこられたから今の(当時の映画の)隆盛があるんだということを決して忘れちゃダメですね。僕らが次の世代に引き継いでいかなきゃいけない。そして、少しでも奇麗に見せてやろう、かっこうよく撮ってやろうと奮闘してくださったスタッフの力も大きいですよ」と、主役級の里見さんが下支えするスタッフの存在も口にされていました。

当時は映画が娯楽の王様だったので、役者もスタッフもお客さんに楽しんでもらおうという意気込みが半端ではなかったそうです。さらに里見さんたちスター俳優が応えられるだけの技量があって相乗効果になっていたのでしょう。時代の主役が映画からテレビに移ったことについて「スケールは映画にはかなわないけれど、テレビにはテレビの良さがあるんだから、やる方(出演者)はできることを一生懸命やるだけですよ。それは時代が変わっても変わらないし、変わっちゃいけないことでしょう」と、見てくれる人があってこその俳優稼業だと強調されていました。お笑いの現場も常に客席、テレビの前、ネットの前にいるお客さんを考えなければいけないと痛感します。

セットなどもAIやCGの進化で、昔ならたくさんのスタッフが何日もかけてつくり上げてきたものが、数時間、数分でできてしまいます。それでも演じるのは人間。「見てくださるお客さんのために」いいものを作る気持ちは変わることはありません。変わってはいけないことでしょう。

里見さんは今もそんな気持ちで映画やドラマをご覧になっていらっしゃるのでしょう。