テレビで話題「痛風の人は頭がいい」は本当!?「”神経保護作用”と”頭がよくなる”は別」医師の直言

28歳で痛風を発症。尿酸値は最大で12だったという

「痛風は軽い病気」という誤解

お笑いコンビ「かまいたち」の濱家隆一(42)が出演するバラエティ番組『これ余談なんですけど…』(ABCテレビ)の12月3日放送回で飛び出した“説”が話題となっている。

痛風の持病がある濱家に対し、人気脳科学者の中野信子氏が、

《痛風の人のほうが頭がいい》

《痛風の原因になる物質の尿酸って、カフェインとほぼ同じ構造なんですよ。神経保護作用があるってことは知られていて、超ハイレベルIQのイギリスメンサの人と、そうでないイギリスの人と比べると、イギリスメンサの人のほうが3倍痛風が多いんです》

と発言したのだ。スタジオは大いに盛り上がり、このやり取りはSNSなどネット上に瞬く間に拡散した。

たしかに尿酸には抗酸化作用があり、パーキンソン病などの神経変性疾患との関連を研究されてきた経緯がある。尿酸値が低い人ほどパーキンソン病の発症リスクが高くなる可能性を示唆する声も一部で上がっている。

だが、札幌中央整形外科クリニック院長の亀田和利医師は、

「神経保護作用とは、神経細胞が病気や加齢で傷つくスピードを抑える可能性を指す医学用語です。病気の進行に関する話であって、知能やIQが高くなるという話ではありません」

と否定する(以下、「」内は亀田医師)。

「一般に言う『頭がいい』というのは、理解力や判断力、学習能力といった知的能力の評価です。神経保護作用とは医学的に別の概念です」

実際、尿酸値と知能やIQを直接結びつけた、臨床的に信頼できるエビデンスは確認されていない。亀田医師は「『痛風は頭がいい人がなる』『どこか得をしている病気』という誤った印象が広がると、病気としての危険性が軽く見られてしまいます」と危惧する。

痛風は、血液中の尿酸が結晶化し、関節内に沈着することで激しい炎症と痛みを起こす明確な疾患である。日本痛風・核酸代謝学会の診療ガイドラインでも「治療と継続的な管理が必要な生活習慣病」と位置づけられている。

放置が招くリスク

高尿酸状態が身体に及ぼす悪影響は痛風発作だけにとどまらない。無症状の間にも、体の中でリスクが進行する恐れがあるのだ。

「痛風発作を繰り返すほど、慢性的な関節炎や関節変形につながることがあります。日常生活が送れているから大丈夫、というわけではありません。

尿酸は腎臓から排泄されるため、負担が蓄積すると尿酸結石や慢性腎臓病へ進行する例もあります。多くの研究で、高尿酸血症は心筋梗塞や脳梗塞、高血圧と関連することがわかっています。関節の病気と思われがちですが、血管や臓器にも影響する全身疾患なのです。

痛風を甘く見ることで、予防や早期治療の機会を逃してしまう恐れがあります。きちんと予防し、必要であれば治療を行い、尿酸値を管理することが、将来の健康を守ることにつながります」

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テレビという多くの人の目に触れる媒体においては、医学に関する話題が独り歩きし、誤解を招きがちだ。濱家自身、痛風を放置したことによって年2~3回ペースで痛風発作が起こり、仕事に支障が出たことを公言している。

芸能人や著名人の発言は影響力が大きいからこそ、エビデンスに基づいた慎重な言葉選びが求められる。笑いとともに消費されがちな話題であっても、その裏にある健康リスクを見失ってはならない。